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体力トレーニングについて

トレーニングをはじめる前に

■使用する言葉の意味

同じ言葉でも使用する人によってイメージしているものが違います。 たとえば、体力とは何ですか。持久力とはどのような能力のことですか。 指導者、競技者間で使用する言葉の意味を明確にしましょう。

■体力・技術力・戦術力・道具・精神力・競技力の関係

競技力は体力、技術力、戦術力、道具、精神力の総合的な力のことを指します。 どれか一つがかけても高い競技力を維持することはできません。 そして高い競技力を持つ競技者ほど勝利をする確率が高くなります。

日本人は競技スポーツにおけるトレーニングを行う場合、技術・戦術練習に多くの時間を割きます。 あるいは道具に異常にこだわります。 もちろんそれは必要なことなのですが、それだけでは競技力は向上しません。

すべてをまんべんなく鍛えることが勝利の確率を上げる一番の近道です。

■運動・栄養・休養

この3つは体力トレーニングを行っていくに当たって一番基礎になる部分です。 体力トレーニングばかり行っていても、特定の栄養素を極端に減らしたりする偏った栄養摂取方法であったり、時間がもったいないからと休養をとらずに行ったりしていては、効率的に体力を向上させることは難しくなってしまいます。

理論に基づいた体力トレーニングを行い、糖質を中心とした食事をとり、休むときは休むということをしっかりと行うことが体力向上の秘訣です。

■体力トレーニングの分類

体力トレーニングにはいろいろな種類があります。 しかしながらそれらを厳密に分類することは不可能です。

循環器のトレーニングと思っていても体を動かすということは筋を使っているわけですし、中枢神経反応も使われています。筋のトレーニングと思っていても心臓は動いて体液が全身を駆けめぐっています。

ですから何をトレーニングしているのかを明確にしなければ、十分なトレーニング効果を得ることは難しくなってしまいます。

■絶対はない

残念ながら技術トレーニングや戦術トレーニングと同様に、「絶対勝利できる体力トレーニング」というものはありません。 あくまで勝利の確率を上げるだけです。

もちろん勝利を目指して指導者も競技者も努力をします。 しかしながら「絶対=100%」という確証を持つことはできません。 選手の心理面を考慮し「絶対」という言葉を使用することはありますが、どの程度勝利に貢献できるのか。それを常に考えながら体力トレーニングを設定する必要があります。

もし絶対勝利できる体力トレーニングが考案されたなら、その考案者は人間ではないでしょう。

体力トレーニングの種類

数あるトレーニングを目的に応じて組み合わせ、トレーニングプログラムを構築してゆきます。

■循環器トレーニング

エネルギー代謝効率や、エネルギー代謝に関する物質の移動能力の向上を目的とする体力トレーニングです。 主に疲労度の減少が期待できます。

種類として持久力向上型トレーニング、筋持久力向上型トレーニングがあります。

■筋トレーニング

筋細胞の能力向上を目的とする体力トレーニングです。 主に筋の仕事率の向上が期待できます。

種類として最大筋力向上型トレーニング、筋仕事率向上型トレーニング、筋柔軟性向上型トレーニングがあります。

■神経トレーニング

中枢神経における情報処理能力の向上を目的とした体力トレーニング。 主に巧緻性や反応時間の短縮、判断力の向上などが期待できます。

種類として中枢神経反応向上型トレーニング、筋協調性向上型トレーニングがあります。

体力トレーニングの注意点

■体力測定を行い、自分の能力を把握すること

体力トレーニングの基本として、適切な負荷をかける必要があります。 しかし、自分の能力を知らずに適切な負荷をかけることは出来ません。 ただ走ったり、エルゴメーターを漕いでもそれは、ただ運動をしたにすぎず、トレーニングとは言えません。 その他にも、集団で走る事がありますが、体力レベルの違う各人が同じスピードで走るのはおかしなことです。 自分がどのくらいの負荷でトレーニングを行うべきか理解していれば、それが無意味な運動であることが分かります。 各個人で自分の適切なトレーニング負荷の範囲を把握していなければ、効果的なトレーニングを行うことはできません。 トレーニングを行う前に体力測定をして、自分自身の能力を知っておく必要があります。

■トレーニング計画を立てること

特に持久力、筋持久力に関しては、マラソンなどの競技を見ればわかるとおり、 計画性を持って行わなければ、決して能力が向上するということはありません。 毎日のトレーニングを気分で決めるのではなく、 1週間単位、1ヶ月単位、3ヶ月単位、半年単位、1年単位でトレーニングスケジュールを立てて、 トレーニングを行わなければ、良いトレーニングを行えるとは言えません。

■効果のあるトレーニングを行うこと

体力トレーニングの内容に関しては、勉強された技術・戦術コーチの方もいらっしゃるようですが、 ほとんどの方が経験に依るところが多く、 その体力トレーニ ングが具体的にどのくらいの効果があるということを、 理論的には全く把握されずに行っている方が意外にも非常に多く見受けられます。 競技スポーツにおいて、効果がわからないような体力トレーニングを行うことは全く意味のないことであり、 時間の無駄でもあると思います。 そのスポーツ種目に必要な体力トレーニングを集中してやるべきです。

■トレーニングの原則を考慮すること

体力トレーニングを行う際に気をつけなければいけない原則があります。 下にある10の項目に気をつけて体力トレーニングを計画する必要があります。

・過負荷の原則
筋の活動力を高めるためには、日常使用するよりも強い運動刺激を筋または神経に課す必要がある。
・特異性の原則
トレーニング効果の特異性に基づいて目的によく合致した運動条件を選択してトレーニングすること。
・漸進性の原則
体力レベルの増加にあわせて次第に負荷刺激を高めていくこと。同時に、トレーニング種目や負荷方式などを高度化・効率化していくこと。
・超回復の原則
体力トレーニング後の十分な休養により、筋の活動力を前回よりレベルアップした状態で次のトレーニングを行うこと。
・優先性の原則
体力トレーニング効果は最初に行った種目で最も大きく、後の種目になるほど小さくなる。もっとも優先順位が高い種目をトレーニングの最初に実施すること。
・積極性の原則
体力トレーニング理論についてよく理解し、常に向上心と目的意識を持ってトレーニングに取り組むこと。
・継続性の原則
体力の高度な発達のためには、強い意志の基、目的にあったトレーニングを長期間実施していくことが必要である。
・個別性の原則
年齢、精査、体力、体格、健康状態、トレーニング目的、トレーニング経験などの個人差をよく考慮した上でトレーニング内容を処方すること。
・全面性の原則
すべての体力要素をトータル的に高めていくこと。
・専門化の原則
専門種目の特性をよく考慮し、それらにできるだけ類似した運動様式で体力トレーニングをすること。