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乳酸について

乳酸とは

組成式C3H6O3、 示性式CH3-CH(OH)-COOH、分子量90.08の物質で、 無酸素性エネルギー代謝(解糖系)の最終産物の一つです。

乳酸の生化学

乳酸はグルコースの分解により発生します。 これは解糖系とも無酸素性エネルギー代謝ともいわれています。 無酸素性といっても酸素がない状態で働くエネルギー代謝ではなく、酸素を必要としないエネルギー代謝のことです。

グルコースに2つのATP(アデノシン3リン酸) と12種類の酵素が反応した結果、4つのATPと乳酸が生成されます。  これらの反応はミトコンドリアを除く細胞質内で行われます。

乳酸と疲労

一般に乳酸は疲労物質という非常に曖昧な定義のものと認知されていますが、 実際は乳酸の蓄積と疲労とは直接の関係はないという考え方が現在の主流です。

疲労の原因はいろいろ考えられていますが、 特に筋運動に関してはエネルギー代謝の際に発生する水素イオンも一つの原因と考えられています。 水素イオン濃度の上昇(pHの低下)が筋細胞内の環境の悪化を引き起こし、 筋の収縮を阻害するというものです。

乳酸と運動

運動をするということは筋収縮を行うということです。 その筋収縮を行うためのエネルギー源は糖質や脂質、タンパク質ではなくATP(アデノシン3リン酸)です。 糖質や脂質、タンパク質はATPを作り出す原料に過ぎません。 そして運動強度によってこれらの原料の使用比率や使用量が変わってきますが、 それぞれの原料が単独で利用されることはありません。

同じ運動強度でも能力やトレーニング状況によりこの割合は変化してきます。 運動強度が高ければそれに比例して糖質の利用割合が増加します。 糖質の利用割合が増加すればそれだけ乳酸も発生します。 この乳酸を測定することにより運動強度を把握することができます。

乳酸を利用する理由

運動強度の測定は主観的なものと客観的なものに分けることができます。

主観的なものは体調その他の要因によって運動強度が変化してしまいます。 例えば、いつも一定のスピードで走っているつもりのジョギングも、実際には毎日スピードが違います。 従って昨日の倍の時間走れば倍の運動をしたことになるとは限りません。

それに比べて、客観的な測定は体調の変化に左右されにくく、 その測定値に基づけば一定の負荷で体力トレーニングをすることができます。

一定の負荷で体力トレーニングできるということは、 事前に立てたトレーニング計画に基づいて効率的にトレーニングを進めていくことができるということです。 限られた時間の中で、ただがむしゃらにトレーニングする事ほど無駄なことはありません。 この客観的な測定を行う尺度として乳酸は適しているのです。 乳酸濃度が一定であれば、 体調の変化に強くは影響を受けずに一定の負荷でトレーニングする計画を立てることができます。